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[ 自治体編 ]
vol.05
2025.09.01

地産地消モデル実現を目指し、ライスレジンを活用した産業の創出を。

鳥取県 南部町
陶山 清孝 町長

鳥取県 南部町 陶山 清孝 町長

プロフィール

東海大学工学部を卒業後、1978年に旧西伯町役場に入職。南部町総務課長、西伯病院事務部長などを歴任し、副町長を経て2016年の町長選で初当選。現在は3期目を務めている。

 

株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司

プロフィール

2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。20205月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、20224月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

全域が環境省選定の「生物多様性保全上重要な里山500選」に指定された、自然豊かな景観が広がる鳥取県南部町。古墳が多く点在し、神話にも登場する歴史ある町です。空き家のリフォーム活用や福祉・子育て支援にも力を入れており、コミュニティ活性化を推進している町としても知られています。今回は、鳥取県南部町 陶山町長とライスレジン代表取締役COO 奥田が南部町の環境政策やお米づくり、ライスレジンとの未来などについて対談しました。

自然豊かな里山の環境を守りたい

南部町は西日本で唯一の「生物多様性保全上重要な里山500選」に選ばれており、以前から先進的な環境政策を推し進める町づくりを実現してきています。「因幡の白うさぎ伝説」などの神話の舞台にもなっており、古くから栄えた町であることも分かっています。その背景にあるのが、朝鮮半島から洋上貿易で仕入れたお米や鉄。稲作が伝わってからも変わることなく、自然環境が守られ、持続可能な産業が続いているのです。陶山町長としても、次世代を築くために環境を守り、しっかりとつないでいきたいと願っています。

奥田:今回、初めて南部町を訪れて驚きました。田園風景の広がる、自然豊かな大変美しい町ですね。同時に、交通の便が良いため、多くの企業の工場が進出していますね。まずは南部町の環境政策について、教えてください。

陶山町長:脱炭素に関する取り組みは、全国でもいち早く実施しました。20年以上前から、ペレットボイラーを導入。廃材を木質ペレット(固形燃料)に加工し、燃焼効率を高めたものを使用しています。10年前には、町が主導したメガソーラーによる発電所を実現しました。売電で得た収益は、環境政策の補助金として町民に還元しています。例えば「山林保護のために、間伐材を活用できる薪ストーブを使おう」というご家庭には、最大20万円程度の補助金を出しているんです。なかなか一気に大量生産はできないのですが、社会の支え手として地域の再生する力を信じながら、人の循環も意識して進めているのが現状です。

他にも南部町では「南部だんだんエナジー株式会社」という地方電力会社を、民間と共同で設立。そこで得た利益は、水道事業に投資しているほか、蓄電池システムの構築にも反映。さらに役場、小学校の給食センター、図書館など電力使用量が多い場所へケーブルを設置し、インフラ整備を進めています。山間地が生き残るためにも、人材を上手に活用し、アイデアを出し、チャレンジしていくこと。それが非常に重要だと感じているそうです。

米作りの裏側には多くの努力がある

南部町のふるさと納税の目玉でもあるのが「お米」。しかし、昨今ではお米を取り巻く環境も大きく変わってきています。

奥田:南部町は古くからの米どころでもあります。最近では米作りが社会課題としてクローズアップされる機会も増えていますね。農業政策については、どのようにお考えでしょうか?

陶山町長:南部町は南北に細長く、北部は平野が広がっており米作りに適した環境になっています。しかし南側の山間部では水の確保が難しく、渇水対策が重要です。水がなければ、やはり農業はできない。水田に水を入れるために、2kmも水路を引いている農家さんもいるほどです。コスト面での採算が合わず、減反へと舵を切らざるを得ないのも分かります。これはやはり国の問題です。「令和の米騒動」は、日本の農業、特に人材不足に関する問題に少しは気づいていただけたのではないでしょうか。一度、水田を荒らしてしまうと、再び米作りを行うのは難しいんです。代わりに別の作物を栽培したり、15〜20年で収穫できる樹木を植えて地域産業を盛り上げたりなど、そうした対策を考えてはいます。そういう意味では、米作りの現状や販売価格を改めて考え直そうと再認識できたと思っています。

米作りを続けていくためには、国からの支えも必要不可欠です。西日本で唯一、豊かな里山の自然環境保全地区に選ばれている南部町だからこそ、守り続けなければいけない風景があります。陶山町長は、地域の課題をしっかりと国に訴え、解決に向かっていきたいと考えています。

農業用ライスレジン製品開発への期待

南部町の自然を守ることは、地域の農業や林業を守り、活性化することへとつながります。そうした中で、お米を原料にしたプラスチック「ライスレジン」の導入が実現すれば、新たな産業創出の可能性も期待できます。

奥田:株式会社ライスレジンは、食用として消費されなかったお米を、独自の技術でバイオマスプラスチックへとアップサイクルしている会社です。プラスチックにおける石油含有量を減らすことはもちろん、生分解性の樹脂製品開発にも着手しています。ライスレジンの事業について、率直にどう感じておられますか?

陶山町長:廃棄されていたお米を有効活用する点に、非常に感銘を受けました。生分解性の樹脂であれば、雑草防止用のマルチシートや、南部町の特産品である20世紀梨の袋かけにも活用できるかもしれません。特に梨の袋かけは重要かつ大変な作業になります。もし生分解性の袋であれば、環境にも優しく、安心ですよね。お米由来ならではの価値を感じますし、非常に面白い取り組みだと思います。

今までは100%石油由来だった製品を見直し、使い道がなかった廃棄米を資源として活用する。そうすることで、ライスレジンはお米を通じて脱炭素の新しい可能性へアプローチしているのです。

次世代にも伝えたい新たな「米」の活用方法

最後に、ライスレジンと連携して実現していきたい未来について意見を交換しました。

奥田:米どころである地域の皆さまと連携しながら、さまざまなアイデアを一緒に形にしていければ当社としても幸いです。今後「ライスレジンとともに、こういう取り組みにチャレンジしてみたい」というイメージやアイデアがあれば、ぜひ教えてください。

陶山町長:そうですね。お米の有効活用については、これから先々も大きな課題になると思っています。米不足への恐怖感が高まっているからこそ、将来的に過剰生産につながってしまう恐れもあるでしょう。そうした状況で「食用以外の用途」として、産業素材にお米が活用できるという視点があれば、生産量や米価も安定するはずですよね。地域で生産されたお米(資源米)を原料にライスレジン製品を作り、その地域内で循環できる仕組みを実現する。そんな理想を形にするために、これからもさらなる創意工夫を期待しています。

対談を終えて

「地産地消」という言葉は、主に“食”について語る際に使われます。今回の対談を通じて、地元のお米から作られたライスレジン製品を地域で活用するという仕組みづくりも、新たな地産地消として、地域に貢献できるのではないかと感じました。地産地消モデルが構築できれば、地方の産業推進にもつながります。過疎化や農業人材の不足など、社会が直面している多くの課題。ライスレジンがその解決の一助になれる可能性を感じることができる対談となりました。

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