北海道 砂川市 飯澤 明彦 市長
プロフィール
北海道砂川南高等学校を卒業後、砂川市役所に勤務。2007年に退職後、砂川市議会議員選挙に立候補し、初当選。4期にわたり議員を務め、2011年に砂川市議会副議長、2015年には砂川市議会議長に就任した。2023年に砂川市長選挙に立候補し、当選。砂川市長として、課題解決に向けたまちづくりの実現を目指している。
株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司
プロフィール
2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。2020年5月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、2022年4月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

北海道砂川市は、夕張山系の丘陵地帯と石狩川に囲まれた、緑豊かな道央地域です。札幌・旭川へのアクセスも良く、「暮らしやすいまち」として移住や二拠点生活を考える方からの注目を集めています。今回は砂川市 飯澤市長とライスレジン代表取締役COO 奥田が「米づくりの現状と環境への取り組み」をテーマに、対談しました。
「砂川産ゆめぴりか」のプライドを守るために
1974年に緑化都市宣言を行い、1984年には環境庁から「アメニティ・タウン(快適環境都市)」の指定を受けた砂川市。市民1人あたりの公園面積が日本一と言われており、「公園の中に都市がある、美しいまちづくり」を掲げています。また「お菓子のまち」としても有名です。国道12号沿いは「すながわスイートロード」と名付けられ、多くの菓子店が立ち並ぶ観光名所となっています。さらに砂川市は人気コスメブランド『SHIRO』の創業地でもあります。ふるさと納税の返礼品にも『SHIRO』が選ばれており、集まった税収は子育て支援に活かされています。
奥田:砂川市は、まちとしてさまざまな魅力を持っていますね。お菓子処としても有名ですが、米・野菜などの農業も盛んだとお聞きしました。最近では「令和の米騒動」とニュースで取り上げられるほど、お米への関心が高まっています。まずは砂川市が直面している農業の現状について教えてください。
飯澤市長:米づくりに関しては、真摯に取り組んでいる農家さんが多いと思います。特に有名なのは「ゆめぴりか」です。2015年に行われた「第1回ゆめぴりかコンテスト」では、砂川市産の米が最高金賞を受賞。化学合成肥料・農薬の使用を、北海道が定める基準回数の半分以下で育てた特別栽培米を実現し、おいしさにこだわってきました。お米のおいしさの基準は、タンパク質含有量で決まります。通常の「ゆめぴりか」は、タンパク値7.4%以下が基準値として定められており、それ以上の値を出したお米は出荷されません。しかし、砂川市では「タンパク値6.8%以下」というさらに厳しい基準値を独自に設けています。その結果、ブランド力がより高まり、東京都内の有名米店でも「砂川産のゆめぴりか」を置いてもらえているんです。
奥田:プライドを持って、米づくりに取り組まれている姿が目に浮かぶようです。一方で、砂川市の農業について課題を感じることはありますか?
飯澤市長:やはり後継者不足でしょうか。現在、市内には370世帯ほどの農家がいますが、10a(アール)以上の土地面積を持つ米農家は30軒ほど。補助金制度を活用いただいたとしても、収益率の高い農作物の生産を選ぶ方が増えています。耕作放棄地も年々増えており、再び田んぼに戻すには難しい状況に陥っている場所も少なくありません。「米の生産を増やそう!」と国が主導で動いたとしても、すぐには対応できないでしょう。

「米づくりは大変」。直面している課題を解決するには?
引き続き、奥田から砂川市が抱えている米づくりへの課題について、質問が投げかけられました。砂川市では、新規就農を支援する取り組みを数年前からスタート。現在までに4件の新規就農につながっており、若手の農業経営者も誕生しています。
奥田:ベテラン農家さんの土地をうまく引き継ぎ、やる気のある就農者がチャレンジできるような仕組みがあると良いのですが…。作付面積の維持はできているのでしょうか?
飯澤市長:ここ数年のデータに変動はありませんね。今のような“米不足”だからといって、急に増やせるほど簡単ではなく、ハードルは高いです。基盤整備を進め、大規模な補助ができるようになっていけば作付面積も広げていけるようになるでしょう。
奥田:なるほど。「ゆめぴりか=おいしいお米」というブランドは確かに築けているものの、生産量や持続可能な生産体制をいかに維持していけるかが大きな課題となっているのですね。
これまで20年以上にわたり米価は変わらず、低価格のまま安定推移を続けてきました。今後はそうした背景を見直し、収益を考えて適正な取引ができるシステムを構築する必要があります。米価上昇によって得られた収益によって、農家の設備投資が進み、省電力化・効率化が実現できれば、社会課題の解決へと一歩近づいていけるでしょう。こうした課題は現在、多くの自治体が共通して抱えているそうです。
ゼロカーボンシティ実現を目指すための環境政策
次に、砂川市が取り組んでいる「環境政策」について詳しく伺いました。
奥田:私たちは「食用として消費されなかったお米」をアップサイクルした、環境に優しい素材を開発している会社です。砂川市でも、環境問題に対するさまざまな取り組みをされていると思います。具体的には、どのような施策を実現されているのでしょうか?
飯澤市長:2025年3月には温室効果ガス排出量をゼロにする「ゼロカーボンシティ宣言」を実施しました。これは、2020年10月に国から発表された「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」という宣言に紐づいたものになります。この宣言は、地球温暖化による気候変動リスクを避けるために、温室効果ガスの排出量を減らすことが目的でした。そこで、市庁舎の暖房には地中熱によるヒートポンプ式を採用。新たに建設された施設には、太陽光発電を設置しています。さらに公共施設、街路灯のLED化もすべて完了しました。
奥田:砂川市は「公園のまち」でもありますよね。1人あたりの公園面積が200平米を超えていると聞きました。これは日本一だとか?
飯澤市長:はい。最近は移住者による人口が増えているため、面積が少し狭くなっているかもしれませんが。それでも、そうした環境の良さはしっかりと守り続けていきたいと思っています。

環境保全を進める一方で、大きな課題も抱えています。それが「ごみ問題」です。そのため、飯澤市長はライスレジンが展開している事業内容を高く評価しています。
飯澤市長:ごみ問題は、どの自治体にとっても切り離せません。分別、さらにごみの総量なども大きな問題になっています。砂川市はごみの量は減少傾向にあるのですが、同時に人口も減少し続けているので、「焼却施設の運営」にも影響が及ぶ可能性も出てきています。現在、焼却施設は使用から15年が経過し、ちょうど改修の時期を迎えています。改修費用はどう捻出するかが、当面の課題になりそうです。
奥田:私たちも各自治体と対話させていただく中で、同じようなお悩みをよく耳にしています。改修費用はもちろん、計画実現までに長い時間がかかりますし、処理能力をどこまで伸ばすべきかも考えなければなりません。ある自治体では、国からの補助金を申請する際に「バイオマスプラスチック製のごみ袋を導入している」という点を評価いただき、加点ポイントをもらえたという話もお聞きしています。そうしたサポートも含めて、お力になれれば幸いです。
このように、ライスレジンの導入が課題解決の糸口につながる可能性も出てきています。食用には不向きな地元産のお米を“資源米”として活用し、アップサイクルする流れができれば、さらにより良い循環が生まれるはずです。資源米は品種を問わず、手間をかけなくても育つ収穫量の多いお米が選べます。通常の食用米よりもコストも手間もを抑えられるため、農家にもメリットがあると言えるでしょう。
未来の環境を守るライスレジンへの期待
最後に、砂川市とライスレジンがともに実現できることについて議論を交わしました。
奥田:お米を使ったプラスチック「ライスレジン」について、どのような印象を持たれましたか?
飯澤市長:お話を伺うまでは存じ上げていませんでした。しかし、近年話題になっているさまざまなプラスチックの問題などを考えると、世間の関心が高まるのは当然だと思います。御社の取り組みは、非常におもしろいですね。将来的には、すべて自然分解できるライスレジンができていく未来を期待しています。
奥田:そうですね。これからも、研究開発に注力していきたいと思います。生分解性プラスチックは、通常のプラスチックよりもコストがかかる点や、日本の環境だと自然分解が容易ではない点など、市場に浸透するためには課題は少なくないです。最後に、ライスレジンへ期待することがあれば教えてください。
飯澤市長:ごみ袋をはじめ、石油由来のプラスチック製品を少しでも減らす活動を、ぜひ一緒に進めていきたいですね。ただ市指定の有料ごみ袋となると、どうしても単価が低いものを選ばざるを得ません。コストの問題がありますので、市民の負担が増えないようにともに工夫していく必要があると思っています。総合的な視野に立ち、環境意識の向上に力をお貸しいただければ嬉しいです。

対談を終えて
ライスレジン製品の導入は、社会的意義の高い取り組みとして、国や自治体から高い評価を受ける可能性を秘めています。飯澤市長からは、私たちのポテンシャルへの期待を感じ、身が引き締まる思いになりました。開発技術の精度向上はもちろん、生産体制の拡大やブランディングにも引き続きチャレンジしていきたいです。