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[ 自治体編 ]
vol.13
2026.03.23

南部藩発祥の地から、お米の新しい選択肢を。北国・南部町の果樹と稲作が紡ぐ未来。

青森県南部町
工藤 祐直 町長

青森県南部町 工藤 祐直 町長

プロフィール

青森県南部町長。平成18年の合併を経て誕生した南部町の舵取りを担う。南部藩発祥の地の伝統を尊重しつつ、県内随一の果物産地としての特色を活かした基幹産業の振興に尽力。担い手不足や農用地の減少といった切実な課題に対し、果樹・稲作・野菜を組み合わせた複合経営の安定化や環境保全型農業の推進など、地域の現実を見据えた持続可能なまちづくりを展開している。

 

株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司

プロフィール

2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。20205月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、20224月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

青森県南東部、名久井岳を仰ぎ馬淵川が流れる南部町。南部藩発祥の地として古くから歴史を紡いできたこの町は、「バナナとパイナップルとミカン以外なら何でも採れる」と言われる青森県随一の果物産地です。しかし現在、農業者の高齢化や担い手不足により、農地の維持が大きな課題となっています。こうした中、食用に適さないお米を環境配慮型のプラスチックに変える「ライスレジン」は、耕作放棄地対策の新たな切り札となり得るのか。工藤町長と株式会社ライスレジンの奥田が、地域の農地を守るための可能性を語り合いました。

厳しい自然を克服してきた「果樹王国」の誇り

一級河川・馬淵川沿いの平坦地ではお米づくりが、丘陵地では多様な果樹栽培が盛んな南部町。春から夏に吹く冷たく湿った風「ヤマセ」による冷害を克服するため、この町では古くから果樹とお米づくり、野菜を組み合わせた複合経営が営まれてきました。しかし近年、その基幹産業である農業は、人口減少と高齢化という大きな壁に直面しています。

奥田:工藤町長、本日はお時間をいただきありがとうございます。南部町は非常に多様な果物が栽培されている「フルーツの町」として有名ですが、その背景には「ヤマセ」という厳しい自然環境との闘いがあったのですね。

工藤町長:ええ。南部町は南部藩発祥の地という歴史があり、古くから農業を大切にしてきました。ヤマセによる冷涼な気候条件を克服するために、果樹とお米づくり、野菜を組み合わせることでリスクを分散し、生活を営んできたのです。しかし、直近20年間で販売農家数は約6割に減少し、担い手不足が深刻な課題となっています。

奥田:農用地面積も減少傾向にあるとお聞きしました。大切に守ってきた農地が使われなくなっていくのは、地域にとって非常に辛いことですよね。

工藤町長:その通りです。地球温暖化による病害虫の発生や有害鳥獣の被害もあり、農業者の高齢化と合わせて、いかに農地を維持し、次世代に引き継いでいくかが町の将来を左右すると考えています。

歴史ある農地をいかに守るか。果樹が主軸である南部町において、お米の新しい出口を作るという提案がどのような意味を持つのか。まずは、お互いの現状を確認し合う段階にあります。

耕作放棄地を再生し、再び「緑の田んぼ」を取り戻す

株式会社ライスレジンが本社工場を構える福島県浪江町では、震災による避難で10年以上も放置された田んぼを再生する取り組みが進んでいます。一度荒れてしまった農地を再び田んぼに戻す際、ライスレジンが果たす役割は、単なる資材の製造に留まりません。耕作放棄地を未然に防ぎ、地域の風景を守る新たなモデルがここにあります。

奥田:私たちの拠点である浪江町では、10年以上耕作されていなかった農地が荒地となってしまったことが大きな課題でした。農家さんがお米づくりを再開しようとしても、最初の数年は美味しいお米ができなかったり、風評被害があったりと、食用としての販売には高い壁がありました。

工藤町長:一度耕作を止めてしまった農地を元に戻すのは、並大抵の努力ではありませんからね。

奥田:ええ。そこで私たちが「ライスレジン用のお米」として全量購入することを約束しました。味を問わない工業用であれば、農家さんは安心して農地の再生に取り組めます。これが実質的な「耕作放棄地対策」として機能し、今では全国各地で地域の田んぼを再生させる取り組みが広がっています。

工藤町長:それは素晴らしい。南部町でも、水害で水をかぶってしまったお米や、規格外となってしまったお米の活用に頭を悩ませることがあります。食用にならないお米でも、しっかりとした出口があれば、農家さんもお米づくりを続ける意欲が湧きますし、農地の荒廃を防ぐ強力な支援策になり得ますね。

お米を「プラスチックの原料」として捉え直すことで、荒れてしまった土地に再び光を当てる。それは南部町が抱える農地維持の課題への、一つの明確な回答となります。

地域の魅力を「お米」で包み、次世代へ届ける

南部町では、農薬や化学肥料を通常の5割以下に減らしたブランド米「南部達者米」の生産や、農業用廃プラスチックの回収補助など、環境保全型農業を推進しています。こうした町の姿勢と、お米をアップサイクルするライスレジンの技術は、非常に高い親和性を持っています。

奥田:私たちのライスレジンは、ホテル用アメニティや飲食店向けのスプーン、自治体指定のゴミ袋など、すでに多岐にわたる製品になっています。南部町産の食用に適さないお米を原料にして、それを町内の施設で使うという資源循環ができれば、これほど綺麗な形はありません。

工藤町長:町には宿泊施設が2箇所ありますから、そこでのブラシなどのアメニティ活用は非常に現実的だと感じました。また、特産品のパッケージなどにお米由来の素材を活用して、新しい見せ方を考えていければ面白いですね。

奥田:子供たちへの教育効果も大きいと思います。自分たちの町で作られたお米が、食べられるだけでなく、環境を守る素材にもなる。その学びは、将来の農業の担い手を育てることにも繋がるはずです。

工藤町長:ありがたいお話です。教育は継続性が大事ですから、子供たちにお米の未来を伝えていくことは非常に重要です。本日は対談という形での意見交換でしたが、南部町の現状にどうライスレジンがフィットしていくか、これから勉強させてもらいたいと思います。

南部藩から受け継がれた土地を愛する精神と、最先端のアップサイクル技術。両者が手を取り合うことで、南部町の風景は100年先へと守られていきます。

対談を終えて

福島県浪江町の工場で、私たちが日々向き合っているのは「お米が持つ新しい可能性」です。工藤町長から南部町の農業の現状、そして「ヤマセ」と共に歩んできた歴史を伺い、改めて「お米」という資源が地域においていかに精神的な支柱であるかを痛感しました。果樹王国として知られる南部町ですが、その根底には、お米づくりで培われた実直な情熱が流れています。食用にならないお米を、地域の魅力を引き立てる資材へとアップサイクルし、それが結果として耕作放棄地対策の柱となる。まだ入口ではありますが、南部町の素晴らしい果物や宿泊施設にライスレジンの製品が添えられ、それが町民の皆様の誇りとなる。そんな未来を目指して、私たちも南部町の歩みに寄り添っていきたいと考えています。

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