株式会社バイオマスレジン北日本
取締役社長 福井 誠司 様
プロフィール
早稲田大学商学部卒業後、サッポロビール㈱入社。その後家業である酒類卸売業㈱成瀬入社、1997年代表取締役就任。2007年盛岡市議会議員。2011~2019及び2023~年岩手県議会議員。2024年㈱バイオマスレジン北日本取締役社長就任。
専務取締役 北條 正憲 様
プロフィール
埼玉大学経済学部卒業後、東京都内の企業に入社。経理・営業職を経験し、2012年に岩手県の北日本製袋㈱へ入社。米穀の仕入・販売を担当した後、2024年㈱バイオマスレジン北日本の専務取締役就任。2025年北日本製袋㈱取締役社長就任。

(左から、株式会社バイオマスレジン北日本 福井社長、北條専務)
株式会社ライスレジンのパートナーとして関わっていただいている株式会社バイオマスレジン北日本。政府備蓄米、古米などの、食用として消費されなかったお米を独自の技術でアップサイクルした日本発の環境素材であるライスレジンの製造・販売を通じて、2024年より事業をスタートさせています。同年9月にはライスレジン産の「ごみ袋として使用できるレジ袋」を岩手県矢巾町の協力店舗に導入。町指定のごみ袋兼レジ袋として活用いただくことで、環境啓発につながっています。今回は株式会社バイオマスレジン北日本の福井社長、北條専務にライスレジンに期待することや、今後の展望について伺いました。(インタビュアー:株式会社ライスレジン渋佐・奥田)
意外性を感じた「お米のプラスチック」
株式会社ライスレジンとの出会いは、今から3年ほど前。親会社である北日本製袋株式會社では、1966年の創立以来、米の集荷・加工・販売を中心に事業を展開していました。しかしコロナ禍で「お米が売れない」という状況下に悩みを抱えており、新たな事業創出の機会を伺っていたのです。そんな時に知人の紹介で「ライスレジンという素材がある」と知りました。
ーライスレジンへの第一印象は、いかがでしたか?
福井社長:知人経由で株式会社ライスレジンをご紹介いただき、お話を聞いてまず驚きました。「お米」というと、米をピューレ状にした「コメネピュレ」や「米粉」などの食品として使用される商品をイメージしますが、お米でプラスチックができるという発想はなかったので。目からウロコでした。天候や価格相場にも左右される「お米」を新規事業の中心にして大丈夫だろうかと一瞬思いましたが、当社の救世主となる素材になるのは間違いないと確信しました。また元々、私たちが扱っていた「お米」の知識・ノウハウを活かし、環境問題解決への貢献につながる点は、非常に魅力的でもありました。明るい未来への希望を感じさせるお話で、社員にとっても大きな期待が持てたのではないでしょうか。
北條専務:確かに、社員からも「前向きに仕事に取り組めるようになった」との声が上がっていましたね。当時の取引はBtoBが中心で、おせんべいなどの菓子メーカーや、酒造メーカーを相手にする卸業を行っていました。そのため、BtoC事業はほとんど経験がなかったんです。2024年に株式会社バイオマスレジン北日本を立ち上げ、新たに「自治体主催のイベントに出て、製品を直接販売する」といった業務にチャレンジしてみて、グループ全体の雰囲気にもプラスの影響を与えているのではないかと思います。
新規事業の推進によって「将来への閉塞感」に風穴を開けた株式会社バイオマスレジン北日本。快進撃は、順調に続いていきます。

カーボンニュートラル実現への関心の高さ
早速、地元自治体を訪問しライスレジンの可能性について提案をした福井社長。特に興味を示していただいたのが岩手県矢巾町役場の担当者でした。その後、秋田県の自治体を訪問した際にも前向きな反応が多く、環境問題への関心の高さを実感することになります。
ー多くの自治体が高い関心を寄せているのは、なぜだと思いますか?
福井社長:CO2排出量の低減に向け、100%石油プラスチック製だったゴミ袋の使用削減につなげたい意図があるからでしょう。またライスレジン製のゴミ袋を導入することで、町民の環境意識を育んでいくことも期待できます。さらに、食用にならないお米を有効活用できるわけですから、注目していただけたようです。
最近ではメディアからの取材依頼も増え、ニュースなどで積極的に取り上げられるようになりました。そのため、会社としての認知度が高まり、社員のモチベーションもさらに向上。業績も順調に伸び始めています。

ライスレジンに感じる大きな可能性
会社設立から1年。新規事業を軌道に乗せ、さらなる事業拡大が期待されています。そうした中で、福井社長と北條専務はライスレジンの新たな魅力と課題を感じ始めていました。
ーまずはお二人が感じているライスレジンの魅力について、教えてください。
北條専務:やはり「お米由来」という点は魅力ですね。岩手県はお米の生産量上位10位以内にランクインしていますし、身近な存在です。商談をする際にも「良い素材だね」「面白いね」という反応ですし、受け入れてもらいやすい素材だと感じています。
福井社長:減反政策などで失われつつある田園風景ですが、ライスレジン用の工業用米をつくることで、田んぼが残せるメリットもあります。仮に食糧危機が起きた際には、その田んぼを食用米に転換できますから、非常に大きな意味がありますよね。次の展開としては、生分解性プラスチックの製造にも挑戦したいですね。最終的に、地球環境に貢献できるプラスチック製品を生み出す必要があると思います。
一方で「課題」もあります。ライスレジンを使って作れる製品のラインナップがまだ少ないこと、今はまだどうしてもコストが割高になってしまうこと、最終製品のバイオマス率(お米率)をより高くした製品の開発も必要です。バイオマスレジン北日本で展開を進めている「ごみ袋」以外の製品開発も必要になるでしょう。
ともに市場規模を広げ、文化を創造していきたい。
株式会社バイオマスレジン北日本は今後も青森・秋田・岩手の北東北エリアでの販路開拓を続け、市場拡大を目指していこうとしています。最後に、これから目指したいビジョンについてお聞きしました。
ー株式会社ライスレジンと一緒に実現したい夢はありますか?
北條専務:現在、多くのプラスチック製品は製造ロットが大きく、スケールメリットを受けられる製品がほとんどです。それに負けないように、市場規模を広げていきたいと考えています。一緒に連携して拡大していくことが、結果としてコストを下げ、製品の普及にもつながります。具体的には、情報共有や製造、販売などの領域での連携ですね。私たちは元々「米の卸」を主軸事業として行っていましたから、流通ルートに強みがあります。「○○産の米が欲しい」となれば、誘致などにも貢献したいです。
福井社長:一人で取り組んでいても、それは「個性」にしかならないんです。みんなで取り組めば「文化」になる。みんながやり始める「文化」が広がれば、マーケットはつくりやすくなります。みんなで成長し、メリットを享受できる未来を描いていくことが理想ですね。それと、農業用資材をつくることができたら良いですよね。農業から生まれた素材を使い、新たな別の農業に活かしていく。可能であれば生分解性プラスチックで、土に帰る製品であれば最高です。

対談を終えて
現在、日本におけるお米の自給率はほぼ100%です。しかし、消費量は年々減少しており、生産基盤をいかに維持していくかが社会的な課題にもなっています。ライスレジンと、バイオマスレジン北日本は「 食用以外のお米の用途」を拡大し、生産者を後方から支えていく役割を担っていこうとしています。ともに「文化を創る担い手」として、協力関係を深めていければ幸いです。