山形県酒田市 矢口 明子 市長
プロフィール
山形県酒田市長。北前船の歴史と豊かな食文化が息づく酒田市の発展を牽引する。公共政策の専門家として大学での教鞭や副市長を歴任した経歴を持ち、専門的な知見に基づいた市政運営を展開。「誰もが主役」のまちづくりを進め、豊かに安心して暮らせる酒田を創っていきます。
株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司
プロフィール
2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。2020年5月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、2022年4月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

山形県庄内地方の北部に位置し、雄大な鳥海山と最上川、そして日本海に抱かれた酒田市。江戸時代には北前船の交易で栄え、豊かな自然が育む美味しい食材と、独自の歴史・文化を大切に守り続けてきた町です。この「食の都」において、食用に適さないお米を環境配慮型のプラスチックに変える「ライスレジン」は、地域の誇りである景観や農業、そして次世代の教育にどのような変革をもたらすのでしょうか。矢口市長と株式会社ライスレジンの奥田が、酒田市の未来を展望しました。
自然と歴史、そして「食」が織りなす酒田の魅力
鳥海山の伏流水や最上川の恵みを受け、日本有数の米どころとして知られる庄内平野。酒田市は、その豊かな自然から生まれる食材だけでなく、北前船が運んできた上方文化が色濃く残る、歴史の深みも併せ持つ町です。
奥田:矢口市長、本日はお時間を頂きありがとうございます。昨日から酒田にお邪魔しておりますが、景観の美しさはもちろん、歴史や文化が街の随所に息づいているのを感じます。市長が考える酒田の魅力とは、どのようなところでしょうか。
矢口市長:酒田の魅力は、まず鳥海山、最上川、庄内平野という素晴らしい景観、あるいは歴史、文化があることです。江戸時代から北前船の交易で栄えたところですので、独自の文化もありますし、この自然から育まれる美味しい食材があります。そして酒田には、調理師専門学校があり、さらに美味しい料理を作ってくださるシェフや飲食店がたくさんあることも自慢です。
奥田:市長は東京から20年ほど前に移住してこられたとお聞きしましたが、改めて外から見たからこそ感じる良さもあるのではないでしょうか。
矢口市長:そうですね。東京までは飛行機でわずか1時間でございます。利便性と、この豊かな自然、文化が共存している。本当に人間らしく暮らせる街だなと実感しております。この素晴らしい環境をいかに次世代に繋いでいくかが、私たちの使命です。
歴史ある景観と食文化を誇る酒田市。その未来を考える上で、環境への配慮と産業の持続可能性は切り離せないテーマとなっています。

スマート農業とライスレジンが守る庄内の風景
庄内平野の広大な田園風景は、酒田市のアイデンティティそのものです。しかし、全国的な課題である担い手不足は、この地でも例外ではありません。酒田市では、スマート農業の推進として酒田市スマート農業研修センターを開設し、データに基づいた人づくりを実施するなど独自の農業施策を展開しています。
奥田:私たちのライスレジンは、耕作放棄地の再生や、食用にならない古米・砕米の活用を通じて地域の風景を守る取り組みを全国で展開しています。酒田市のような大規模な米どころにおいて、お米の新しい出口を作るという提案をどう受け止めていらっしゃいますか。
矢口市長:非常に興味深い取り組みです。食用にならないお米を使ってプラスチックを製造するというお米の活用方法は新鮮に感じました。酒田市では、スマート農業研修センターに「もっけ田農学校(もっけだのうがっこう)」を開設し、気候変動下でデータに基づいた米づくりのできる「人づくり」や「土づくり」に力を入れています。農業者の高齢化や労働力不足に対して、いかに効率よく、かつ持続可能な形で農地を守っていくか模索しています。
奥田:私たちの本社と工場のある福島県浪江町では、10年以上放置された田んぼをライスレジン用のお米で再生させています。酒田市のように高い技術を持つ米どころであれば、ライスレジンの原料としてのお米づくりも、地域のレジリエンスを高める一つの手段になり得るかもしれません。
矢口市長:お米を単なる食としてだけでなく、環境素材の原料としての価値も持たせる。食用のお米を作らなくなった田んぼの活用先として、ライスレジンがその出口として確立されれば、庄内平野の緑の風景をより確かなものにするとともに、プラスチック減の世界的な流れにも貢献できるので、可能性を探っていければと思います。
お米の可能性を広げることは、生産現場の維持だけでなく、地域全体の資源循環を加速させる鍵となります。
地域の「もっけだの」を、循環のカタチに変えて
酒田市には、何かをしてもらった際に「ありがたい、申し訳ない」という感謝を込めて使う「もっけだの」という言葉があります。この温かな精神性をベースに、環境への配慮や資源の有効活用を、地域一体となって進めていく可能性が語られました。
奥田:現在、ライスレジンは自治体の指定ごみ袋や歯ブラシなどのホテルアメニティ、さらには幼児玩具など、身近なところで活用されています。酒田市のお米が資源となり、形を変えて市民の皆様の生活に戻ってくる。そんな循環が実現できれば素晴らしいですね。
矢口市長:自分たちが育てたものが、ごみ袋やアメニティとして街を支え、環境を守る力になる。これは市民の皆様にとっても、誇らしいことだと思います。
奥田:特に子供たちへの教育効果は大きいと思います。お米がプラスチックになるという驚きが、環境問題や地域の農業への関心に変わっていく。
矢口市長:おっしゃる通りです。ライスレジンのような環境技術を通して、「もっけだの」の精神で資源に感謝し、大切に使うという意識が育まれます。酒田市は、古くからの港町で自由な雰囲気があり、風力や太陽光、バイオマスなど豊富な資源があります。こうした資源を生かして、豊かに暮らせるまちづくりを目指したいと考えています。
酒田が誇る食と景観、そして感謝の文化。それらがライスレジンという技術と出会うことで、さらに持続可能な強みへと進化していきます。

対談を終えて
今回の対談を通じて、酒田市が持つ文化の厚みと食への真摯な姿勢を改めて感じることができました。矢口市長がお話しされた「人間らしく暮らせる街」という言葉。それは、豊かな自然や歴史を、単に保存するだけでなく、現代の技術や価値観と融合させながら次世代に受け継いでいく姿勢から生まれるものだと確信しました。食用に適さないお米を資源に変えるライスレジンの技術が、酒田の誇る庄内平野の風景を守り、美味しい食を支える「もっけだの」の精神と共鳴する。そんな未来の第一歩を、ここ酒田から共に踏み出していけることに、大きな可能性を感じています。