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[ 自治体編 ]
vol.16
2026.07.13

日本一の清流が磨いた、美味しいお米の誇りを未来へ。米と温泉と花の町・蘭越町が紡ぐ、お米の新しい物語。

北海道 蘭越町
金 秀行 町長

北海道蘭越町 金 秀行 町長

プロフィール

北海道蘭越町長。蘭越町職員から総務課長、副町長を経て、2016年に町長に就任。一級河川・尻別川の恵みが育む低タンパクの良食味米を誇りに、「美味しくて安全なお米づくり」を信条として農業を町政の柱に据える。基盤整備や食育、清流尻別川の保全に力を注ぎ、酒づくりや薬草づくりなど「お米と温泉と花の町」ならではの新しい価値の創造にも挑み、生産者とともに歩む持続可能な米どころの実現を目指している。

 

株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司

プロフィール

2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。20205月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、20224月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

北海道蘭越町。ニセコ連峰の裾野、後志の地にひろがるこの町は、清流日本一に幾度も輝く一級河川・尻別川の恵みを受け、「お米と温泉と花の町」として歩んできました。ミネラル豊かな大地が育てる「らんこし米」は、低タンパクの良食味米として全国に名を知られ、町を挙げて味を磨き上げてきた米どころです。お米の新しい価値を創造するライスレジンと、美味しいお米づくりを誇りとする蘭越町。両者が、米どころの矜持と、お米のこれからについて語り合いました。

「お米と温泉と花の町」。日本一を競う、米どころの矜持

町の魅力を尋ねた奥田に、金町長がまず語ったのは、やはりお米でした。日本一の清流と肥沃な大地、そして町を挙げて磨いてきた味への誇りが、その言葉の節々から感じられました。

奥田:本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。恥ずかしながら蘭越を訪ねるのは今日が初めてで、不勉強で大変恐縮なのですが、まずこの町の魅力を町長の口からお聞かせいただけますか。

金町長:蘭越は昔から「お米と温泉と花の町」というキャッチフレーズで、町づくりを進めてきました。中でもお米は格別です。一級河川の尻別川が流れていて、清流日本一に何度も選ばれています。その川から得る肥沃な大地で、ミネラル豊富なお米が育つ。米価が低迷していた時代から、「安くて美味しく、安全なお米」として皆さんに選んでいただけるよう、ずっとPRを続けてまいりました。また、15年前から生産者が実行委員会となって、全国から生産者が集う「米-1グランプリ in らんこし」という食味の大会を、この蘭越で開いているんです。

奥田:全国規模の大会を、産地である蘭越が主催されているのですね。

金町長:全国から約400点が出品され、予選を勝ち抜いた30人が、決勝でガチンコの食味審査をするんです。蘭越に関係のない審査員を選んでいますが、これまで蘭越の生産者が6回、グランプリに輝いています。これはブランド化に大きく貢献していると思います。美味しいお米はタンパク質とアミロースが低いのですが、らんこし米はタンパク質が低いものでなんと5パーセント台なんです。生産者が協力して、いいお米をみんなで作っていこうという、そういう取り組みが、やっとできあがってきたのかなと思っています。

温泉や花にも恵まれた町ですが、その営みの中には、いつもお米がありました。生産者が支え合いながら味を磨いてきた歩みそのものが、蘭越という米どころの確かな誇りでした。

清流を守り、未来へ手渡す

美味しいお米を育てるのは、清らかな水です。その源である尻別川を巡って、蘭越は流域全体で長い取り組みを重ねてきました。その歩みと、清流を子や孫の代へとつないでいくための取り組みをお話しいただきました。

奥田:お米づくりに欠かせない水も、尻別川から頂いているわけですね。

金町長:そうです。尻別川が清流日本一になったのには、長い歴史があります。30年くらい前から流域の7町村で「尻別川統一条例」を定め、下水道や浄化槽の整備も徐々に町を挙げて進めてきました。当時の思いは今も引き継がれており、今週の土曜日も尻別川クリーン作戦をやります。今年で32回目で、400人を超える人が集まって、カヌーやボートに乗って川の中まで清掃するんです。近隣の町村からも多くの人たちが来てくれます。

奥田:それだけの人が毎年いらっしゃるとは。尻別川への愛が地域に根づいているのですね。

金町長:子どもたちも一緒に来てくれます。環境への配慮は、子どもたちと一緒に活動することで、次の世代に繋がっていく。小学校の給食でも、月に1回、町でつくったオーガニック米を出して、今日はオーガニックのお米だよと伝えながら、安心・安全な食を子どもたちに学んでもらっています。いい食育になっていると思います。

尻別川の清掃には子どもたちも加わり、学校の給食では町産のオーガニック米が出されています。環境を守る営みは、蘭越の暮らしと教育の中で、次の世代へと受け継がれていました。

お米の可能性を、もっと先へ

蘭越のお米づくりは、食卓の外へも広がり始めています。食用米から日本酒を生み出し、お米に続く特産として薬草も育て始めました。こうした挑戦の延長で、対談はライスレジンとの協働へと進みました。

金町長:去年の11月、蘭越に新しい酒蔵ができたんです。山梨の「七賢」で醸造を担っていた方が移住してきて、酒米ではなく、蘭越の食用米「ななつぼし」、それも無農薬・有機のお米だけを使ってお酒を造っているんです。最初に造ったスパークリングは「ウパシ」、アイヌ語で雪という意味です。その後も新しいお酒を次々と仕込んでいて、いまでは若い生産者も加わって、お米を作りながら一緒に酒造りをやっています。美味しいお米でできたお酒、これもまた蘭越の特産になると期待しています。

奥田:「らんこし米」にブランド力があるからこそ、人も技術も集まってくるのですね。

金町長:お米に続く特産をと、薬草づくりも始めました。京都大学の先生が27年かけて改良した、地球上で蘭越でしか生産していない赤しそです。お酒も薬草も、これまでにない価値を生み出そうとする試みです。だからこそ、ライスレジンのように食用に適さないお米を、いろいろな商品を開発しながら、新しい価値をつくっていくということは、素晴らしいことだと私も思っています。

奥田:正直に申し上げますと、お話を伺うまでは、美味しいお米のブランドを築いてこられた蘭越だからこそ、我々のような食用以外のお米の取り組みを、どう受け止められるか心配もありました。その取り組みを町長が前向きに受け止め、背中を押してくださって、本当にありがたいです。

金町長:すぐに蘭越でこれをやりましょうと言うのは、米事情から難しい部分もあります。本町では、農家が個別に販売ルートを持っているので、原料をどう集めるかが課題です。それでも、安心・安全と、二酸化炭素の排出削減に貢献するというのは、これからの時代にますます必要となります。生産者が頑張って生産したお米を無駄にしないことは、大切なことだと思います。ぜひ近い将来、ご一緒できればと思います。

慎重な言葉の奥に、確かな期待を感じることができました。日本を代表するお米のブランドを築き上げた町の誇りは、その先にある新しい循環をも、静かに受けとめようとしていました。

対談を終えて

ニセコの山々を越え、初めて訪れた蘭越町で最も強く心に残ったのは、金町長が語る一つひとつの言葉に滲む、お米への揺るぎない誇りでした。清流日本一の尻別川が磨いた水、ミネラル豊かな大地、そして全国の生産者がしのぎを削る食味の大会。それらはすべて、「美味しくて安全なお米を、町を挙げて作る」という長い積み重ねの結晶でした。その誇りがあるからこそ、酒蔵の挑戦も、世界で蘭越だけの薬草づくりも、この地に根を張ろうとしているのだと感じました。蘭越のお米づくりには、農協一括ではないがゆえの、難しさもあります。けれども町長は、課題を率直に語りながらも、安心・安全と環境への貢献という未来の価値を、まっすぐに見据えておられました。今回交わした対談という小さな種も、いつか日本一の米どころから芽吹く循環の輪として、きっと花を咲かせてくれるはずです。そんな確かな手ごたえを抱かせてくれる、実り多い時間となりました。

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