島根県 雲南市 石飛 厚志 市長
プロフィール
平成2年3月 早稲田大学法学部卒業
平成2年4月 島根県庁入庁
(平成5年4月~平成9年3月 自治省(現総務省)へ出向)
平成28年4月 島根県立中央病院経営部長
平成31年4月 島根県健康福祉部健康推進課管理監
令和2年12月 島根県庁退職
令和3年2月1日 雲南市長就任
株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司
プロフィール
平成18年4月 野村證券株式会社入社
令和2年5月 バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長就任
令和4年4月 バイオマスレジン南魚沼 社長執行役員就任
令和6年7月 株式会社ライスレジン 代表取締役COO就任

西日本を代表する「米どころ」でもある島根県。雲南市を始めとする「雲南地域」では日本酒用の酒米生産が8割を占め、品質の高さと安定した供給量を誇ってきました。江戸時代には、土でできた炉の中で、砂鉄と木炭を燃やして製鉄を行う「たたら製鉄」が発達。鉄分を含んだ肥沃な土壌環境の下で、稲作も並行して栄えてきたそうです。今回は、島根県雲南市の石飛市長とライスレジン代表取締役COO 奥田が「お米を取り巻く社会的課題」について対談しました。
持続可能な農業のあり方を模索する雲南市の今
お米を多く育ててきた島根県雲南市ですが、最近では「特色のあるブランド米」の生産にもチャレンジしています。特に、農薬の使用率を50%に抑えた「島根県雲南市プレミアムつや姫 たたら焰米(ほむらまい)」は高く評価されており、注目を集めているそうです。
奥田:島根県は「西日本の米どころ」として知られ、特に美味しいお米の生産で知られています。それだけ、島根の農家さんが抱く「お米への想い」には強いものがあるのでしょうか?
石飛市長:そうですね「おいしいお米をつくりたい」という気持ちは、確かに強いと思います。雲南市は中山間地域ですので、低価格なお米を大量生産することは難しいですが、良質な「おいしいお米」をつくることは、私たちにとってごく自然な選択なんです。また農林水産省が認定した「日本の棚田百選」にも、島根県の7市町村7地区が選ばれています。住民の方々から応援の声をいただき、古くから大切にしてきた稲作をこれからも守っていきたいとの気持ちもあります。そうした付加価値があれば、地域が直面している高齢化問題の解決や、農業の後継者不足の解消につながる米づくりもできるのではないか。大規模農業ができない私たちだから可能な「自立した農業モデル」が目指せるのではないかと、感じているんです。
石飛市長は、地域内で循環できる「持続可能な農業」の実現に向けて、少しずつ歩みを進めながら、海外市場での勝負も視野に入れた取り組みをスタートしようとしています。

「工業用米」が社会課題を解決するかもしれない
奥田:お米由来のプラスチックを生産するとなると、「おいしさ」よりも「収穫量」が重視されます。今までとは別のアプローチで、農業に取り組むことが可能です。なじみのあるお米を使ったライスレジンの導入が、新たな農業の可能性を開く可能性について、どのようにお考えですか?
石飛市長:農業は需要の波に対応する必要がありますし、お天道様が相手ですから。自然環境の影響も考えながら、対策を取っていかなければなりません。おいしさにこだわった米づくりは大変ですが、工業用であれば負担も減ります。また、最近では耕作放棄地の問題もあります。牧草地へ転用する例もありますが、ライスレジンのための田んぼであればそのまま活用できるわけですね。耕作放棄地が生まれてしまう理由のひとつに、世代交代の難しさがあると思います。農業を引き継ぎたい方がいるならば、すぐに耕作地を貸してあげられるような「農地保有合理化法人」を立ち上げられると良いですよね。農業経営の規模を拡大し、複数の農家で生産体制が組めるようになれば農地の保有拡大にもつながります。こちらはすでに具体的な検討を始めていますし、他にも流通部門を確立させるなどの試行錯誤もトライしてみたいですね。
積極的に「新たな農業への挑戦」を進めるためのチャンスとして、ライスレジンの生産につながるお米をつくる。それが未来の扉を開くかもしれないと、石飛市長は感じています。
ごみ減量化とライスレジンとの重なりを求めて
石飛市長は「脱炭素」に関するもうひとつの着眼点として、「ごみの減量化」にも関心を持っています。
奥田:雲南市でも、ごみ処理問題への関心は高いのでしょうか?
石飛市長:市民の皆様の意識は非常に高いと思います。例えば生ごみですと、各家庭での分散処理を目指し、木製の生ごみ処理機「キエーロコンポスト」の普及に取り組んでいます。各家庭への設備導入に向けた学習会と製作ワークショップを開催し、コンポスト導入の目的とメリットを丁寧にお伝えしています。ごみの減量化もつながり、導入されたご家庭からは好評を得ています。ライスレジンさんで作られているお米のプラスチックには生分解性のものもあるとのことなので、コンポストと合わせてうまく活用できれば良いですね。
奥田:私たちは行政との取引も多く、指定ごみ袋にライスレジンをご活用いただく機会が増えています。雲南市にもライスレジンで何か貢献できることがあれば嬉しいです。

対談を終えて
日本の社会問題でもある「農業の担い手不足」や「耕作放棄地」。さらには「脱炭素」などの世界レベルで考えなければならない環境問題。さまざまな社会課題の解決につながる一歩目として、ライスレジンへの期待が寄せられていると感じた対談となりました。雲南市は以前より環境問題への意識が高く、石飛市長ご自身もバイオマスプラスチックに強い関心を持っているそうです。石飛市長が雲南市HPに寄せている「市長コラム」には、このような一文が載っています。
─対立ではなく協力、利己ではなく利他の精神を基盤として、調和の中で持続可能な雲南市を皆さんとともに一緒につくってまいりましょう─
持続可能な未来に向かい、私たちも微力ながら貢献していきたいと思います。