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[ 自治体編 ]
vol.03
2025.07.14

環境問題への高い関心は、よりよい街づくりにつながる。そのために「ライスレジン」ができることとは?

滋賀県 守山市
森中 高史 市長

滋賀県 守山市 森中 高史 市長

プロフィール

東京大学法学部卒業後、2002年に総務省入省。その後、秋田県庁や守山市役所、内閣官房、岡山県庁などへの出向を経て、2015年に再び総務省へ。2022年には総務省を退職し、2023年より守山市長に就任。国・県・市での20年間にわたる行政経験を活かし、とにかく現場へ行って参加する「徹底現場主義」を貫いている。

 

株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司

プロフィール

2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。20205月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、20224月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

琵琶湖の南東岸に位置する滋賀県守山市。鈴鹿山系からの湧き水が注ぎ込む野洲川の扇状地に位置し、古くから稲作も盛んに行われてきました。今回は、滋賀県守山市の森中市長とライスレジン代表取締役COO 奥田が「ライスレジンの活用に期待すること」をテーマに、対談しました。

市民1人ひとりが、水資源の大切さを感じている。

滋賀県は、「近江」と呼ばれた米どころで、江戸時代には全国有数の石高を誇っていました。中でも守山市は開けた平野が広がる地域で、駅周辺こそ開発で水田は見られなくなりましたが、市の中部以北には豊かな水田が広がります。弥生時代の大規模な遺跡も複数存在し、古くから人々が生活していたことがわかります。また、琵琶湖を預かっていることから、環境を大切にする文化が根付いています。

奥田:古くからお米が生産されている守山市ですが、環境に配慮したお米づくりへの取り組みも積極的にされていますね。

森中市長:滋賀県では独自の環境基準のもとで水質を守り、低農薬で育てたブランド米「みずかがみ」や原則オーガニック栽培のブランド米「きらみずき」など、非常に厳しい基準の中でこだわった米づくりを実現しています。「みずかがみ」や「きらみずき」は温暖化対応品種として滋賀県で開発され、猛暑でも安定した品質を保てるお米です。

奥田:やはり市民の皆さんにとって、環境問題は身近なテーマなんでしょうね。琵琶湖も含めた「周辺環境への保全」という観点で、意識して取り組まれていることはありますか?

森中市長:はい。守山市として、長く取り組んでいることを2点ほど挙げたいと思います。1つはホタルの保護活動です。守山市では商店街の裏にあるような街中の川でも、ホタルが飛んでいます。実はこのホタルたちは、市民の皆さんが育てた幼虫を放流したもの。かつては国の天然記念物指定の第1号に守山市のホタルが入っていたのですが、一度絶滅させてしまった過去があり「皆で復活させよう」という想いが強いんです。もう1つは琵琶湖の水質を守る活動です。自分たちの飲み水としてはもちろん、農業用水にも使っている水ですので、水質汚染はすべて自分たちの生活に跳ね返ってきます。水質改善に向けて清掃活動や外来種対策をコツコツと続けたところ、水がキレイになり、固有種の「ホンモロコ」や淡水真珠の「琵琶湖パール」も復活しました。市民の皆さんの努力と、環境保全への意識の高さを、日々実感しております。

守山市の環境と、人の魅力に心惹かれて。

琵琶湖に面していない市も含めて、滋賀県全体として「琵琶湖を守ろう」とする環境意識の高さを感じているという森中市長。2008年に初めて総務省から守山市役所に出向し、都会と自然が共生している環境に心打たれたそうです。

奥田:守山市で働きたいと思われた理由は何だったのでしょうか?都会と自然とのバランスが取れているところに、魅力を感じたのですか?

森中市長:もちろん、駅前は活気があって便利ですし、車で10分ほど走ると大自然が広がる豊かな環境は魅力的でした。子育てもしやすく「こんなにバランスが取れたところはない!」と思いました。ただそれ以上に、市民の皆さんの「街づくりへの熱意」が一生懸命に伝わってきたことが、最大の魅力でした。「街のために良いことだったら、やろうぜ!」とか、そんな雰囲気があって。市民の心の真ん中には、いつも琵琶湖がある。そして、暮らしやすい街の実現に向けて、尽力している。そんな印象を抱いていました。

総務省の人事では同じ職場に再び出向することは稀なので、人事に滋賀県庁への出向希望を出し続け、念願かなって2018年に滋賀県庁へ出向。それほどに守山市に惚れ込み、2023年には守山市長となりました。

行政主導だから実現できるライスレジンの可能性

森中市長がライスレジンを知ったきっかけは、琵琶湖を切り口にSDGsをアクションまで落とし込む琵琶湖版SDGs「マザーレイクゴールズ(MLGs)」の取り組みでした。MLGsのイベントを実施した際、滋賀県庁職員がライスレジン製のうちわを持っていることに注目。知人の会社が卸したお米を使用したプラスチックだと知り、さらに驚いたそうです。

奥田:ライスレジンの存在を知った時の印象は、いかがでしたか?

森中市長:最初は正直、もったいないと思いました。食べ物をコストをかけて加工するなんて、なぜだろうと。もしかしたら、何かメリットがあるのかもしれないと後日、メールで知人に尋ねました。すると「あのお米は食用にならないものなんだ」と教えてくれて。食用販売にはできないお米を活用していると知り、なるほどと納得しましたね。

奥田:最初は「なぜ?」というインパクトも大きかったんですね。最近ではライスレジンを使った自治体のゴミ袋をはじめ、少しずつ活用いただく機会も増えてきています。森中市長としても、ライスレジンにご期待いただいている部分があるのでしょうか?

森中市長:そうですね。やはり背景にあるのは、CO2の排出量削減への期待です。化石燃料を使わずに資源を活用していくことが、技術的にできる時代が来たのだと感じています。コストはもちろん高くなりますが、地球環境のことを考えるとやむを得ない。企業の中でも、「一定のコスト増はやむを得ない」というコンセンサスができてきている気がします。今まさに、技術的にも、そして価格的にも壁を超えていける状況が近づいているのではないでしょうか。

奥田:積極的に導入いただくには、コスト面での課題を避けて通ることはできないものです。コストを下げるには、やはり一定の量産体制を維持しなければなりませんから。

森中市長:そういう意味では、まず行政からライスレジンのような「バイオマスプラスチック」を導入することに、大きな意味があると考えています。無理をしてしまえば、持続可能ではなくなります。経済的にも循環できる仕組みづくりが重要でしょう。多少のコスト増ならば、みんなで分かち合うこともできるかもしれません。それぐらい、環境問題への取り組みに市民1人ひとりが当事者意識を持っているんです。今後は子どもたちにも、ライスレジンの可能性を知ってもらいたいですね。使われないお米を有効活用して、生活の中に役立っているんだよ──そんな話をしながら、有益な関わり方ができれば嬉しいです。

奥田:自治体のごみ袋だけでなく、給食用の食器や文房具など、さまざまな分野に応用できるのもライスレジンの強みですからね。これからも共に、活用方法を模索していきたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

対談を終えて

環境問題に対し、先進的に取り組んでいる守山市。ライスレジンの知名度が決して高いわけではない中、興味を持っていただき、今回の対談を実現することができました。市の行政は「ゆりかごから墓場まで」と言われるほど、さまざまな領域を横断した仕事があり、多くの人と関わる機会があります。街づくり、人づくり、そして環境づくりへの協働パートナーとして、共に歩んでいきたいと思います。

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