北海道共和町 成田 慎一 町長
プロフィール
北海道共和町長。元共和町職員を経て、2021年に町長に就任。「町の一番の魅力は人」を信条に、子育て支援と農業基盤の強化を町政の柱に据える。稲わらの資源化や鳥獣対策など先進的な施策を打ち出し、町の将来像「魅力あふれる大地と笑顔あふれるひとびとがともに創生するまち、きょうわ」の実現を目指している。
株式会社ライスレジン 代表取締役COO 奥田 真司
プロフィール
2006年に野村證券株式会社に新卒入社。富裕層向けのリテール業務や上場企業などの法人向けコンサルティング業務を経て、戦略企画業務に従事。2020年5月より、バイオマスレジングループに参画。バイオマスレジン南魚沼 取締役副社長に就任した後、2022年4月に社長執行役員に就任。2024年より株式会社ライスレジン 代表取締役COOに就任。

北海道共和町。積丹半島の基部、岩内平野にひろがるこの町は、安政4年(1857年)に開拓の鍬が打ち下ろされて以来、ニセコ連峰の裾野で道内屈指の農業の町として歩んできました。スイカやメロンの「らいでんブランド」、そして「かかしのふるさと」として知られ、3つの村の合併から生まれた、その名のとおり調和を大切にする土地です。お米の新しい価値を創造するライスレジンと、お米づくりを基幹産業とする共和町。両者が描く、農業の町の循環と未来について語り合いました。
「町の一番の魅力は人」。出生率を支える、農業の底力
町の魅力についての回答として、豊かな自然や景観の話を予想していた奥田に、成田町長がまず挙げたのは意外な答えでした。共和町の強さの根っこにあったのは、人と、その人を育てる農業でした。
奥田:本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。私は高知の出身で、共和町を訪ねるのは今日が初めてです。早速ですが、この町の魅力を町長の口から教えていただけますか。
成田町長:魅力はありすぎるほどですが、中心はやはり農業です。農業を基幹産業とする町ですから、その農業がしっかりしていることが一番の特徴。共和町はもともと、お米と畑作を半分ずつの面積で作り続けてきました。お米の低温貯蔵施設もメロンの選果施設も町が持っていて、全量を1等米として出荷するから、市場からの信頼につながります。そして、私がいま一番自慢しているのは合計特殊出生率の高さ、つまり、ご夫婦から生まれるお子さんの数が全国でもトップクラスということです。その背景には、農家1戸あたりの所得が高く、安心して2人目、3人目を産み育てられる、一次産業の安定性があります。子育て支援センターには初めて出産される方が集まり、相談し合えるネットワークも生まれています。核家族で身近に相談相手がいない時代に、そのつながりが安心を支えているのです。
奥田:てっきり、自然やかかしのお話が中心になると思っていました。まず人、なのですね。
成田町長:そうです、まず人。人は農業の心だと思うのです。春に種を植え、秋の収穫まで辛抱して待つ。その辛抱する力が町の行政にも根づいていて、私が少し先走っても、議会も町民も「まずやってみよう」と受けとめてくれる。1857年の開拓以来の遺伝子のようなもので、私もそれを引き継いでいる気がします。若い農家たちも、農業開発センターで土壌分析や研究を重ねながら、横でつながっている。その人と人のつながりが、持続可能な農業の足腰になっています。
豊かな自然も、らいでんブランドの実りも、すべては「人」を起点にめぐっている。共和町の強さの根っこを、町長は迷いなく語ってくれました。

燃やさず、めぐらせる。稲わらが生んだ「本物の循環」
お米をベースにしたライスレジンと、米作りを基幹産業とする共和町。その親和性を確かめるように、対談は環境への取り組みへと進みました。きっかけは、町長が語った一つの忘れられない記憶でした。
成田町長:共和町は、北海道でも珍しいほど稲を燃やす町なんです。秋には煙だらけで、洗濯物を干す事もできないほどで。4年前、就任した頃のことです。煙の中をお母さんとお子さんが歩いていて、お子さんが咳をしていた。そのお母さんに「町長、農業の町だから我慢しなきゃならないよね」と言われたとき、はっとしました。これは大人がちゃんと守ってやらなければならない、と。
奥田:その思いから、新しい取り組みが生まれたのですね。
成田町長:はい。そばで有名な幌加内町が、そば殻を固形燃料にする取り組みを始めていて、それにヒントを得ました。共和町では、稲わらやもみ殻、スイカやメロンの蔓といった残渣を、燃やさずに固形燃料「バイオコークス」へ変える事業です。近畿大学バイオコークス研究所の知見をお借りしています。共和町の特徴は、農業用ビニールハウスからの廃プラスチックがたくさん出ること。固形燃料を作るにはエネルギーが必要ですが、よそでは電気や油を使うところを、うちはこの廃プラスチックから造った燃料を燃やして固める。燃やすのではなく、町の中で資源をめぐらせる。本物の循環です。
奥田:燃やしていたものが、資源として生まれ変わるのですね。
成田町長:そうです。燃やしたあとに残るのはミネラルだけ。この灰をどう土に戻すかを、北海道大学大学院の肥料の研究として進めてくださっています。すべてが循環していく。今年から3年間の実証事業で、北海道の支援も受けています。芽が出たら、つぶす必要はない。その芽をいかに伸ばすか。例えば、減農薬に挑むクリーン農業も、若手の取り組みを私自身が現地で確かめながら、しっかり育てていきたいと日々奮闘しています。
煙の中の母子の一言から、町の未来を変える事業が生まれる。地域の課題と正面から向き合うことが、そのまま循環の出発点になることを、共和町の歩みは教えてくれます。
子どもが「うちのお米だ」と誇れる、町の未来へ
対談の最後、町長が思い描く未来と、ライスレジンとの協働の可能性に話が及びました。そこには、次の世代へとつなぐ確かなまなざしがありました。
成田町長:共和町のお米を原料の一部としてプラスチックにし何かを作る。そうすれば石油の使用量も減りますし、自然にも優しい。何より、「うちのお米でこういうものを作っているんだぞ」と、町民が自慢できるようにしたいのです。たとえば、ごみ袋。あるいは、いま新しく義務教育学校を立ち上げようとしていますから、食器類。すべてでなくても、そのうちの一つでも「これは共和町のお米で作られているんだ」と言えたら。
奥田:お茶碗などができたら素敵ですね。子どもたちの誇りになります。
成田町長:子どもたちは喜ぶでしょうし、自慢にもなる。ぜひご一緒できればと思っています。共和町は3つの村が合併して生まれた町です。だからこそ、横のネットワークを広げ、行政が「こういうことをやっています」と発信し続ける。それを何より心がけています。
お米が、子どもたちの手のなかで「ふるさとの誇り」に変わる。町の名が示す調和の心は、農業から教育まで、共和町のあらゆる営みを静かにつないでいました。

対談を終えて
初めて訪れた共和町で、最も強く心に残ったのは、町長が迷いなく口にした「まず人」という言葉でした。豊かな自然も、らいでんブランドの実りも、この町には確かにあります。けれども、その土台にあったのは、春に植え秋まで待つ辛抱強さであり、新しい挑戦を「まずやってみよう」と受けとめる町民の優しさでした。すべてが「人」を起点にめぐっていました。稲わらを燃やさず、廃プラスチックから造った燃料を燃やして固め、残った灰を土に還す。共和町が描く資源循環の歩みは、ライスレジンが目指す思想と深いところで響き合っています。お米から生まれるごみ袋や食器が、「これはうちのお米でできているんだ」という子どもたちの誇りへと変わっていく。煙の中でお子さんを案じたお母さんの一言が、町の未来を変える事業へと育ったように。今回の対談という小さな種も、いつか大きな循環の輪として花を咲かせる。そんな確かな手ごたえを抱かせてくれる、実り多い時間となりました。